そもそも「編集」とは何ぞや?と思った

第0回でフリーペーパー発行に至った経緯は記したが、制作を決意する直接的な動機については触れていなかったので、ここで補足しておきたい。

昨年の末にDeNAの「welq」をはじめとして、キュレーションメディア(まとめサイト)の不正・問題が発覚し、いくつものキュレーションメディアが閉鎖・改変を余儀なくされたことを覚えていらっしゃる方は多いのではないだろうか。実は私もアルバイトとして、某社のキュレーションメディアの編集に携わっていた時期がある。

DeNAが一斉にバッシングを受ける前から、私はキュレーションメディアのヤバさに気づいていた。法律で明確な規定がないグレーゾーンであることを良いことに、キュレーションメディアは次々とweb上の記事を転用し、コピペ摘発を逃れるためリライトを施した。

そんなキュレーションメディアでも、書籍や雑誌と同じように「編集」という言葉を使っていることに私は疑問を感じた。そもそも「編集」とは何ぞや?と思ったのである。そこで2年生のゼミ論文で外山滋比古氏らの編集論を研究した。その結果「編集」には確たる定義は存在せず、編集者各々の経験によってそれぞれ意味が決定されるという結論に至った。

そこで私は自分なりに「編集」を定義すべく、出版物であるフリーペーパーの制作・発行を決意したのである。

自費出版ではなく、フリーペーパーを作りたい

話を制作に戻そう。フリーペーパーの制作を決意したものの、いきなり壁にぶつかった。過去に少なからずフリーペーパー制作に関与したことがあるとはいえ、独立してしまった以上私の実績はほぼ無いに等しい。そんな奴がいきなり「今日からフリーペーパー作ります」とみんなに言ったところで、大ぼら吹きだと思われてしまう確率が高い。家族や友人など身内ならまだしも、初対面の時間の無い大人がどこの馬の骨ともわからない大学生の相手をしてくれる確率は低いように思えた。

最近フリーペーパーも多様化し、ZINEやミニコミ、同人誌との境界も曖昧になってきているためこの考え方の賛否が分かれるかもしれないが、基本的にフリーペーパーは広告収入でなりたっていなければならない。例えば自費で発行費等々を賄っている場合は、例え無料で配布していたとしても、それは自費出版になってしまう。フリーペーパーを名乗る以上は広告収入はマストだと考え、私は営業のための資料作りにまず取り掛かった。

作成したのは全部で2種類。フリーペーパーの概要(責任者や発行計画、ポリシーなど)を記した「媒体資料」と、創刊号の特集や企画の予定をまとめた「企画書」である。

まず何はともあれ決めなければならなかったのは、雑誌名である。これは意外とすんなり決まった。イタリア語で“編集”を意味する『Modifica』である。2016年、粗悪な記事がネット中で横溢していた頃、私は“編集”という行為の意義をずっと考えていた。そして私なりに導き出した答えは、“編集”はコンテンツを組み合わせたり、組み替えることで、その受け手に何らかの変化を起こさせるということであった。ただ、自己満足を得るためだけの雑誌作りは自慰行為と同じである。ぜったいにそうすまい、という思いも込めて雑誌名は『Modifica』に決定した。

次に決めねばならなかったのが、「部数・ページ数・紙質」である。この3要素が発行費を左右する。私はかなりの慎重派なので、いきなり5000・6000部といった勝負に出るではなく(何十人規模のフリーペーパーサークルだとこれくらい発行している所もある)、1人でも何とか配り切れそうな1500部に設定した。大量に刷って、在庫を余らせるよりも、少ないながらも配り切った方が後々スポンサーにもアピールし易いと考えたからである。

次にページ数だ。これは完全に発行費ありきで考え20ページにした。正直24、28ページ作りたいという気持ちはあったし、自分ならそのページ数でも書けると思っていた。実際、制作中に20ページでは収まりきらない量の企画を立て、泣く泣く削った。しかし24、28ページ作る発行費をかき集めてくる自信は、当時の私には無かった。

最後に紙質である。意外と紙質の違いで値段も大きく変わるのだ。フリーペーパーの紙質は「コート紙」と「マット紙」の2種類がある。前者は表面がツルツルしている上に、光沢がある。後者は前者に比べて、その名の通り光沢が無い。その分、落ち着いた印象を受け取り手に与えられる。そしてこちらの方がお高い。ただ正直な所、普通の上質紙で作るわけでもあるまいし、紙質が冊子の捌け具合に影響するとは思えなかった。迷わず、安い方の「コート紙」を採用した。

印刷会社との交渉の結果、発行費は輸送費諸々も込々で6万円(元から印刷屋よりリーズナブルなのに、さらに値切ってもらった)で決着がついた。こうして私の最初の目標は6万円分の広告費を営業で集めてくることに決まった。媒体資料には他にも『Modifica』のポリシーや詳細な制作動機を記したが、長くなるので今回は割愛。

文化をたしなむ大学生のためのフリーペーパー。

既に『Modifica』を手にした方はご存知かと思うが、表紙のロゴ上には「文化をたしなむ大学生のためのフリーペーパー」と銘打たれている。実際、内容もその通りで『Modifica』はカテゴライズするのであれば、カルチャー誌である。創刊号はどういう文化を題材にするのかを考えた時、真っ先に思いついたのが読書であった。制作者の自分が取り組むにしても、『Modifica』をはじめて受け取る読者からしても取っ付きやすいテーマだからだと、思ったからである。

テーマは読書に決定したが、重要なのは具体的な企画内容だ。勉強に、バイトに、恋に、サークルに忙しくて、本をいつも読まない大学生を振り向かせる、本に興味を持たせるような企画でなければならないと考えた。そこで真っ先に思いついたのが「読書はモテるのか?」企画である。いささか不純な動機ではあるが、本を読め!と強く言うだけではなかなか本を読んではくれないだろうから、大学生の誰もが気にする恋愛を入り口にした動機付けを考えた。他にも私のゼミの先輩で秋本先生もビックリするくらい『こち亀』を詳細に研究し、評価されない先輩がいたので、これは良いネタを見つけたぞと思い、インタビューを敢行。発行後、この企画は特に読者からの反応が良かった。とまあ、こんな感じでいくつかの企画を計画し、企画書にまとめた。

またテーマ企画以外にも、今後2号、3号を発行することも見据えてレギュラー企画を計画した。企画書に記載したうち散歩企画と、人形とその持ち主の人生について語る感動系コーナーはスペースが不足し、泣く泣くカットされたが、「編集長のなんでもおススメコンテンツ」では、存分私がプッシュしたいコンテンツについて書きまくり、良いガス抜きとなった。

「編集長のなんでもおススメコンテンツ」で紹介したavengers in sci-fiの新曲「I Was Born To Dance With You」がゆるくて、でもカッコいいので貼らせていただく。

 

こうして完成した「媒体資料」と「企画書」というわずか2枚の紙っぺらを携えて、私は広告獲得のための営業に乗り出した。

(つづく)

 

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